おいてけぼりティーンネイジャー

「白き薔薇(そうび)は傷つきぬ 荒(すさ)ぶ暴風雨
(あらし)の手荒らさに」

裕子は、俺に伝えたかったのかもしれない。

「されども花の香(か)は増しぬ 多くも享(う)けし苦の為に」

私は大丈夫、と。

「暴風雨(あらし)の花に 汝(なれ)も似よ。」

あなたも頑張れ、と。







「……というわけで、仕事で来ました。これ、お土産。」
極寒の京都。
……早く中に入れてくれー!……とも言えず、俺は震えながらそう言って紙袋を渡した。

「懲りずに、また、来たの?どういうわけか知らないけど。」
裕子が呆れながら、中に入れてくれた。

「なんや!またあんたか!何しに来はったん!」
遅れて座敷に入ってきた大村さんは、今日も元気そうだ。

「仕事でーす。それも、お父さんに関係深いんですよ。」
「一条さんにお父さん呼ばれる筋合いはないで。」
つーんと横を向いた大村さんは、おもちゃのようにかわいく見えた。

「じゃ、当面は、大村さん。」
俺は二ッと意識的に笑って見せてから続けた。
「明日から1泊、大村さんの御実家のお寺でお世話になるんですよ。一応お話通しておこうと思って。噂の暎慶(えいけい)さんにも挨拶したいし。」

「……暎慶って……何でまた。」
「え~、だって、俺と同じ字のヒトに逢ったのはじめてだしぃ、……知織がお世話になったみたいだしぃ。」
大村さんは俺が何を言いたいのかわかったようだ。

「……わかりました。私からも弟と暎慶にお口添えしましょ。芸能人やからて手加減無用と。」
出た!意地悪~!

その夜、俺はちゃっかり大村家で夕食をご馳走になった。
「鍋って久しぶり~。旨いですね。」

「水炊きは素材がそのまま出るから、そのへんの農薬まみれの野菜ではこの味は出ませんのや。」
ご満悦で鍋をつつく大村さんはやっぱりかわいく感じた。
つくづく、いい夫でいい父親なんだろうな。
……今はまだ、わだかまりいっぱいだけど、いずれ必ずいい舅にもなってくれるだろう。

「大村さん、飲みに行きませんか?」
食後そう誘ってみたけど、
「一条さん、明日、寺に入るんですやろ?」
と、断られた。

「じゃ、終わってから……と言いたいけど、早く東京に帰って知織に会いたいから、また今度。」
大村さんと裕子は顔を見合わせて呆れていた。
苦笑しているようにも見えた。