「……あれはあかんわ……一条さん。」
大村さんが小声で言った。
へ?
何が?
「裕子が、何で頑(かたく)なに中絶を拒んで知織を産んだ思てますん。一条さんの子ぉかもしれん、って一縷(いちる)の望みを捨てきれんかったからやろに。かわいそうに……あれじゃ、裕子が哀れですわ。」
大村さんはそう言って、両目を押さえた。
え?え?え?
何で?
どういう意味?
「あの……俺、ホントに裕子には手出ししてませんけど。」
「今更嘘ついてもしょうがあらへんねんし、たぶん、そう言わはるんやったらそうなんやろ。でも、裕子は事件のことはほとんど覚えてへんのです。相手が誰かも、人数も。そこに一条さんが加担してたかいいひんのかも。」
大村さんはハンカチで涙を抑えると、深くため息をついた。
確かに、昨日も裕子、覚えてないって言ってたけど……俺の子が欲しかったのか?
……マジか……。
「いや、でも……だったら、俺、何で後からふられたんでしょう?」
「そんなもん、一条さんが信用できひんからに決まってますやろ。」
大村さんは、ジロリと俺を見た。
俺は狐につままれた気分……いや、タヌキにばかされた気分で立ち尽くした。
つまり、裕子は、俺をふったくせに俺が好きだったのか?
今更すぎるだろ……それ。
意味わかんねー。
しばらくして裕子が紙袋を持ってきた。
「知織の好きそうなお惣菜を詰めときました。母に連絡しときますので、持って行ってやってもらえますか?」
「え!?俺が!?いいの!?」
だって、おじいさん達、俺の存在、知らないんじゃないの?
「何、素っ頓狂な声出してはりますんや。一条さん、そのために来はったんですやろ。」
さっき泣いたタヌキが、えらそうにそう言った。
……よくわかんないけど、ちょっとだけ状況好転したんじゃないか?
俺、知織のお見舞い行ってもいいんだ。
「わかった!行く!お預かりします!任せてください!」
裕子から紙袋を受け取ると
「じゃ、失礼しまーす。また来ますね!」
と挨拶して踵を返した。
「もう来んでええで。」
タヌキの言葉は俺には「またおいで。」に聞こえたような気がした。
「……IDEA(イデア)の……」
「まゆちゃんの……」
京都から東京へ戻ってすぐ、知織の祖父母の家を訪ねた。
裕子から俺が行くことを正確には聞いてなかったらしく、おじいさんとおばあさんは絶句してしまった。
大村さんが小声で言った。
へ?
何が?
「裕子が、何で頑(かたく)なに中絶を拒んで知織を産んだ思てますん。一条さんの子ぉかもしれん、って一縷(いちる)の望みを捨てきれんかったからやろに。かわいそうに……あれじゃ、裕子が哀れですわ。」
大村さんはそう言って、両目を押さえた。
え?え?え?
何で?
どういう意味?
「あの……俺、ホントに裕子には手出ししてませんけど。」
「今更嘘ついてもしょうがあらへんねんし、たぶん、そう言わはるんやったらそうなんやろ。でも、裕子は事件のことはほとんど覚えてへんのです。相手が誰かも、人数も。そこに一条さんが加担してたかいいひんのかも。」
大村さんはハンカチで涙を抑えると、深くため息をついた。
確かに、昨日も裕子、覚えてないって言ってたけど……俺の子が欲しかったのか?
……マジか……。
「いや、でも……だったら、俺、何で後からふられたんでしょう?」
「そんなもん、一条さんが信用できひんからに決まってますやろ。」
大村さんは、ジロリと俺を見た。
俺は狐につままれた気分……いや、タヌキにばかされた気分で立ち尽くした。
つまり、裕子は、俺をふったくせに俺が好きだったのか?
今更すぎるだろ……それ。
意味わかんねー。
しばらくして裕子が紙袋を持ってきた。
「知織の好きそうなお惣菜を詰めときました。母に連絡しときますので、持って行ってやってもらえますか?」
「え!?俺が!?いいの!?」
だって、おじいさん達、俺の存在、知らないんじゃないの?
「何、素っ頓狂な声出してはりますんや。一条さん、そのために来はったんですやろ。」
さっき泣いたタヌキが、えらそうにそう言った。
……よくわかんないけど、ちょっとだけ状況好転したんじゃないか?
俺、知織のお見舞い行ってもいいんだ。
「わかった!行く!お預かりします!任せてください!」
裕子から紙袋を受け取ると
「じゃ、失礼しまーす。また来ますね!」
と挨拶して踵を返した。
「もう来んでええで。」
タヌキの言葉は俺には「またおいで。」に聞こえたような気がした。
「……IDEA(イデア)の……」
「まゆちゃんの……」
京都から東京へ戻ってすぐ、知織の祖父母の家を訪ねた。
裕子から俺が行くことを正確には聞いてなかったらしく、おじいさんとおばあさんは絶句してしまった。



