おいてけぼりティーンネイジャー

「何なに!?何で?」
「……はじめて付き合った子が『詩が好き』って言ったから、話題作りのために詩集を片っ端から読んだの。で、グールモンをかなり気に入って意気揚々と語ったんだけど……その子、本当は詩に興味なかったみたいでね。完全に俺の空回りだった、と。」

「へえ……。その子は、初恋のヒトとは違うの?」
……自分で聞いたくせに、ちょっと悲しくなってる……我ながら、アホやわ。

「違ったね。俺も幼かったんだよね。かわいい子に告白されて舞い上がったんだな。」
暎さんの言葉に憮然としつつも、詩集を開いた。

「じゃ、この四つ葉のクローバーは、その子からもらった、ってわけじゃないんですか?」
「クローバー?」

怪訝そうに暎さんが本を覗き込んで、首をかしげた。
「知らないなあ。てかこの本、俺の?持ってたっけ?」

「え!?」
私達は、マジマジと見つめ合った。
「……暎さんのベッドルームの書架に並んでました。」

「ホントに?気づかなかった……」
え~~~。
「じゃあ、クローバーも当然知らない、と。」
「うん。」
「……」

言葉を失った。
どういうことだろう。

「じゃ、俺、行くね~。あ、それ貸して。読み直したい。」
「どうぞ。……てか、暎さんの書架にあった本です……」
もう一度そう言って、クローバーの挟んであるページを開けて、そのまま渡した。

「白き薔薇(そうび)は傷つきぬ 荒(すさ)ぶ暴風雨(あらし)の手荒らさに
 されども花の香(か)は増しぬ 多くも享(う)けし苦の為に
 帯には挟め この薔薇(そうび) 胸には秘めよ この傷手(いたで)
 暴風雨(あらし)の花に 汝(なれ)も似よ。」

暎さんは、タイトルを見ただけで、そうつぶやいた。

「覚えてはるんですか!」
「……詩って覚えちゃわない?」

そう言いながら、暎さんはちょっと遠い目をした。
「つらくて淋しいけど、感動するほど強いよね。」

……って言われても、私はその詩を覚えるほど読んでないのでわからない。
「何て詩ですか?あとで勉強します。」

「あらしの薔薇。」
暎さんの目が沈んで見えた。

玄関先で暎さんを見送ってから、私は、頭の中を整理した。
クローバーの経緯は、結局謎のまま。

でもグールモンが曰く付きだったとは知らなかったな。
……そのことを聞いた、後の暎さんの彼女の誰かが、古書店から買ってきて贈った?
何か、まだ噛み合ってない気がする。
ま、いいか。
勉強しよう。