おいてけぼりティーンネイジャー

「知織ちゃん。お昼ご飯できたわよ。」
祖母が私を呼びに来た。

「あら。綺麗になったわね。」
そう言いながら、祖母は部屋を見回し、最後は私の持ってる本に目を止めた。
「……知織ちゃんも、そんなの読むの?」

そんなの?
「おばあちゃん、プラトン、嫌い?」

祖母は肩をすくめた。
「だって意味がわからないもの。もっとわかりやすく言ってくれないと。煙に巻かれてるみたいで。」
「……そっかあ。」

ちょっとしょんぼりすると、祖母がクスッと笑った。
「そんな顔すると、裕子そっくりね。それ、裕子が神田で見つけて来たんじゃなかったかしら。けっこう高くて、裕子のお小遣いじゃ買えなかったから、おじいさんが買ってあげてた気がするわ。」

神田ってことは、古書で買ったんだ。
へえ。

「じゃあ、これ、前の持ち主のかな?」
私は本をパラパラとめくって、四つ葉のクローバーを見せた。

「あら、懐かしい。昔はよくこうして、押し花にしたわね。クローバーを見つけたら、這いつくばって必死で四つ葉を探したものよ。……今は、品種改良で四つ葉のクローバーのありがたみ、なくなっちゃったけどね。」

ふぅん。
そう言えば、小さい頃、母が探してたのを見たような気もする。

「じゃ、お昼にしましょ。おじいさんが待ちくたびれてるわ。食べたら、今日も図書館に行くんでしょ?」
「うん。」
既にまとめた荷物の中に『パイドン』も滑り込ませた。


その日から3日間、IDEA(イデア)は東京でのコンサート。
さすがに3日ともは無理なので、私は明日だけ行くことになっていた。
「おはようございます。何時に出はるの?」
「んー、14時かな。おはよ。」

時計を見ると、あと30分ほど。

「スタッフさんが優秀だと、重役出勤できて幸せですねえ。」
そう言いながら、テーブルにお勉強セットを並べた。

「俺が出てからにしなよ。今は俺と遊んで。」
そう言いながら暎さんは、私を背後から抱きしめて、首筋に唇を寄せた。
「はい。」
素直にそう返事すると、暎さんはうれしそうに私の身体を弄(まさぐ)った。

くすぐったさに身をよじると、両腕をしっかりホールドされて、クルッと反転させられた。
真っ正面に暎さん。

金色の髪は、童話の王子様のように長い。
白い肌も、彫りの深い顔立ちも、好き。
大好き。

「……コンサートの前にもアドレナリン出るのかな。」
暎さんが困った顔でそう言った。

「いや、それは……ただの性欲では……」
私がそう言うと、暎さんはちょっとむくれた。

その顔がまた可愛くて……私は、暎さんにキスしようと、背伸びをした。
……届かない。
暎さんは笑って少しかがんで、キスしてくれた。
唇がふれるだけのキスから、深~いキスへ。
だんだん立ってられなくなって、ソファに移動して貪り合った。

「時間、ないよな……」
残念そうな暎さんに

「そうですね。これからじゃ遅刻しはりますね。」
と苦笑した。