おいてけぼりティーンネイジャー

「知織ちゃん、目ぇ合わしちゃダメ!」
平原先生が私の頭をぎゅっと抱きしめるように目隠しした。

「まゆ先輩、レズ疑惑の記事出ちゃいますよ。」
暎さんの愉快そうな言葉に、
「私は、あんたと違って一般人だから、しょーもない記事になりません!ほら、早く、行きなさい!」
と、平原先生は突っぱねた。

「はいはい。じゃ、失礼します。まゆ先輩。おひいさん?」
暎さんは、父が私をそう呼ぶことを覚えていたらしい。

でもそれが平原先生の神経を逆なでしたようだ。
「あんたが呼ぶなっ!」
と、暎さんの背中にまだ吠えていた。


「……確かに、目立ちますね、客観的に見て。」
遠く離れて小さくなっても暎さんはよく見えたので、つい平原先生にそう言った。

「全然客観的に見られてないでしょ。何て目ぇして見つめあってんのよ。あーっ!もうっ!あんな一条の目ぇ、知らんわっ!」
ぷりぷりしてる平原先生の機嫌をこれ以上損ねないように黙った。

けど、やっぱり気になったので、聞いてみた。
「平原先生と、IDEA、何かお仕事でご一緒したことあるんですか?それに、週刊誌って……」

平原先生は答えたくなさそうだったけど、ちょうど合流した祖父母がはしゃいで教えてくれた。
「まゆちゃん!あのひとっ!ほら!前にまゆちゃんと噂になったヒトでしょ!?挨拶した?」
噂になったぁ?

祖母の言葉に、平原先生の顔が真っ赤になった。
「挨拶ぐらいしましたよっ!子供じゃないんだから!ほら、行きますよ!新幹線乗り遅れちゃう!」

……いや、挨拶したのはマネージャーさんで、暎さんも平原先生も子供みたいでしたけど……。


どうやら暎さんと同じ新幹線で東京へと戻ることになったが、平原先生が目を光らせてたので、それ以上の接触はなかった。

祖父母は何も知らない私に、暎さんと平原先生のなれそめを教えてくれた。
平原先生がオリンピック候補に選ばれる前に密着番組があり、中学時代同じクラブだった暎さんがレポーターを勤めたらしい。
その番組の音楽をIDEAが担当したことがきっかけで、今もなお陸上関係の音楽の仕事が続いてるそうだ。

へええええ!
全く知らなかった!

「ビデオとか残ってたら、見てみたい……」
私がそう言うと、祖父がうんうんとうなずいた。
「じゃあ、帰宅したら上映会しようか。まゆちゃんも一緒にどうだい?」

「けっこうです!明日も学校ですから、帰ります!」
すごーく嫌がってる平原先生は逆に何だかかわいらしくて……親近感を抱いた。