13時過ぎに実家を出た。
「夏休みはこっちで過ごせばいいのに。」
別れ際に母にそう言われて、私は慌てて首を振った。
「夏休みは、普段できない受験のための勉強をがっつりしたいから。」
……暎さんの家で。
帰りは、父が京都駅まで送ってくれた。
「ほな、みなさん、知織をよろしゅうお願いします。知織、がんばりや。」
父の言葉に涙が浮かんだ。
「知織ちゃんは、お父さんが好きなのねえ。」
新幹線乗り場へと移動しながら、平原先生がそう言った。
「優しさが心に沁みます。」
私の返事に、平原先生はうなずいた。
「そうね。昔は優し過ぎて物足りない印象だったけど、ああいう人のそばで生きるのってすごく幸せだろうなって思うわ。裕子も穏やかな顔してたなあ。……一条じゃ、そうはいかないわよ。」
最後は語気を強めて、平原先生がそう言った。
思わず、祖父母に聞こえないか、キョロキョロした。
「叔父さんも叔母さんも、お土産を買いに行ったわ。……ねえ?わかるでしょ?深みにはまる前に別れちゃいなさい。それか、さくっと通り過ぎちゃいなさい。」
そんなこと言われても……もう、遅いよ。
どう言おうか困ってると、遠くのほうでざわめきと悲鳴が上がった。
何気なくそっちを見て、愕然とした。
暎さんが、通路の向こうからスタッフに案内されて改札に向かっていた。
「……何で一条がここにいるの!」
平原先生が舌打ちして、私の前に立った。
私を暎さんの目から隠そうとしてるらしいけど、見えるって、そりゃ。
「あ!平原選手じゃないですか!一条さん!先輩ですよ!」
IDEA(イデア)のマネージャーらしき男性が、近づいてきた。
「いつもありがとうございます。おかげさまで切れずにお仕事いただいてます。今日は?ご旅行ですか?」
如才ない挨拶に、平原先生は顔をしかめた。
「ええ。こんなところで、そんな目立つの連れて来ないでくださいよ。恥ずかしい。」
「……これでも気ぃ遣って気づかないふりしてたんですけどねー。有能なマネージャーが、すみませんね、まゆ先輩。」
苦笑しながら、暎さんが近づいてきた。
あちこちから、シャッター音とフラッシュが光る。
……こういうめんどくさいことが暎さんにとっては日常なんだなあ、と改めてかわいそうになった。
「よく逢うわね。」
「また週刊誌のネタになりますか?」
暎さんの皮肉げな笑いと言葉がもの珍しくて、私は平原先生の背中ごしに暎さんを見上げた。
ふぅっと、暎さんの目が優しくなった。
視線が絡まる。
それだけなのに、身体の奥が甘く疼いた。
「夏休みはこっちで過ごせばいいのに。」
別れ際に母にそう言われて、私は慌てて首を振った。
「夏休みは、普段できない受験のための勉強をがっつりしたいから。」
……暎さんの家で。
帰りは、父が京都駅まで送ってくれた。
「ほな、みなさん、知織をよろしゅうお願いします。知織、がんばりや。」
父の言葉に涙が浮かんだ。
「知織ちゃんは、お父さんが好きなのねえ。」
新幹線乗り場へと移動しながら、平原先生がそう言った。
「優しさが心に沁みます。」
私の返事に、平原先生はうなずいた。
「そうね。昔は優し過ぎて物足りない印象だったけど、ああいう人のそばで生きるのってすごく幸せだろうなって思うわ。裕子も穏やかな顔してたなあ。……一条じゃ、そうはいかないわよ。」
最後は語気を強めて、平原先生がそう言った。
思わず、祖父母に聞こえないか、キョロキョロした。
「叔父さんも叔母さんも、お土産を買いに行ったわ。……ねえ?わかるでしょ?深みにはまる前に別れちゃいなさい。それか、さくっと通り過ぎちゃいなさい。」
そんなこと言われても……もう、遅いよ。
どう言おうか困ってると、遠くのほうでざわめきと悲鳴が上がった。
何気なくそっちを見て、愕然とした。
暎さんが、通路の向こうからスタッフに案内されて改札に向かっていた。
「……何で一条がここにいるの!」
平原先生が舌打ちして、私の前に立った。
私を暎さんの目から隠そうとしてるらしいけど、見えるって、そりゃ。
「あ!平原選手じゃないですか!一条さん!先輩ですよ!」
IDEA(イデア)のマネージャーらしき男性が、近づいてきた。
「いつもありがとうございます。おかげさまで切れずにお仕事いただいてます。今日は?ご旅行ですか?」
如才ない挨拶に、平原先生は顔をしかめた。
「ええ。こんなところで、そんな目立つの連れて来ないでくださいよ。恥ずかしい。」
「……これでも気ぃ遣って気づかないふりしてたんですけどねー。有能なマネージャーが、すみませんね、まゆ先輩。」
苦笑しながら、暎さんが近づいてきた。
あちこちから、シャッター音とフラッシュが光る。
……こういうめんどくさいことが暎さんにとっては日常なんだなあ、と改めてかわいそうになった。
「よく逢うわね。」
「また週刊誌のネタになりますか?」
暎さんの皮肉げな笑いと言葉がもの珍しくて、私は平原先生の背中ごしに暎さんを見上げた。
ふぅっと、暎さんの目が優しくなった。
視線が絡まる。
それだけなのに、身体の奥が甘く疼いた。



