再会を懐かしむ一行をわき目に、父が私の耳のそばで小声で言った。
「おひいさん。……ちゃんと勉強がんばってるんやてな。お母さん、安心してはるしな。これからも……道、踏み外さへんようにがんばり~な~。」
「……はい。」
何となく、父は勘付いているような気がした。
「今日はどこに食べに行くん?」
「せっかくやし鉾町(ほこちょう)にしたわ。……お節介な女将がいいひんから気楽やろ。」
父はそう言って、意味ありげにニヤリと笑った。
……やっぱり、聞いてるんだ……2年前、暎さんと行ったお店の女将から……
「あの……」
うまく誤魔化さなきゃと思うんだけど、何て言ったらいいかわからず困ってると、父は私の背中を優しく押した。
「ほら、早よ家(うち)、入ろう。……何も言わんでええからな。お母さんは知らはらへんし。うちは、おひいさんのこと信じてるし。嫌なことがあったらいつでも帰っといでぇや。」
……優しい……。
父の大きな愛に包まれて、私は涙をこぼした。
久しぶりの我が家は、やはり居心地がよかった。
お気に入りのピアノを奏で、父の書斎に増えた本をチェックし、母のお小言をありがたく頂戴した。
平原先生は、私が京都人らしく外面(そとづら)がいいので勘違いした男子にもててる、と、少し誇張して話していたが、暎(はゆる)さんのことは言わなかった。
……逆に怖い気がした。
16時過ぎ、母が用意してくれた浴衣に着替えて、みんなで鉾町ヘと繰り出した。
まだ時間は早いけど、土曜日だからか、歩行者天国が始まってないからかヒトいっぱい。
なのに、さらに狭い路地に入ると、打ち水された落ち着いた別世界だった。
「特等席じゃないですか!よくこんなとこ取れましたねえ。ありがとうございます。嵩彬(たかあき)さん。」
平原先生の言う通り、通されたお座敷の窓から鉾が見える。
鉾のやや斜め前に当たるので、勇壮な姿がよく映えていた。
「お囃子も目の前ですからやかましかもしれませんけど、ゆっくり楽しんでください。」
女将の挨拶の通り、程なく囃子方の町衆がにぎやかな祇園囃子を始めた。
♪コンコンチキチンコンチキチン♪
「鱧~。今年はじめて。」
落としより、くず寄せが好きな私は、超ご機嫌でいただいた。
鱧の天ぷらも、おいしかった!
正統派な京料理に満足してると、由未ちゃんからメール受信。
すぐ近くの珈琲専門店にいるらしい。
「食後に美味しいコーヒーをいただきたいわ。」
祖母の言葉に、母がうなずいた。
「じゃ、由未ちゃんに挨拶がてら、押し掛けましょうか。」
……由未ちゃん、びっくりしはるやろうなあ。
「おひいさん。……ちゃんと勉強がんばってるんやてな。お母さん、安心してはるしな。これからも……道、踏み外さへんようにがんばり~な~。」
「……はい。」
何となく、父は勘付いているような気がした。
「今日はどこに食べに行くん?」
「せっかくやし鉾町(ほこちょう)にしたわ。……お節介な女将がいいひんから気楽やろ。」
父はそう言って、意味ありげにニヤリと笑った。
……やっぱり、聞いてるんだ……2年前、暎さんと行ったお店の女将から……
「あの……」
うまく誤魔化さなきゃと思うんだけど、何て言ったらいいかわからず困ってると、父は私の背中を優しく押した。
「ほら、早よ家(うち)、入ろう。……何も言わんでええからな。お母さんは知らはらへんし。うちは、おひいさんのこと信じてるし。嫌なことがあったらいつでも帰っといでぇや。」
……優しい……。
父の大きな愛に包まれて、私は涙をこぼした。
久しぶりの我が家は、やはり居心地がよかった。
お気に入りのピアノを奏で、父の書斎に増えた本をチェックし、母のお小言をありがたく頂戴した。
平原先生は、私が京都人らしく外面(そとづら)がいいので勘違いした男子にもててる、と、少し誇張して話していたが、暎(はゆる)さんのことは言わなかった。
……逆に怖い気がした。
16時過ぎ、母が用意してくれた浴衣に着替えて、みんなで鉾町ヘと繰り出した。
まだ時間は早いけど、土曜日だからか、歩行者天国が始まってないからかヒトいっぱい。
なのに、さらに狭い路地に入ると、打ち水された落ち着いた別世界だった。
「特等席じゃないですか!よくこんなとこ取れましたねえ。ありがとうございます。嵩彬(たかあき)さん。」
平原先生の言う通り、通されたお座敷の窓から鉾が見える。
鉾のやや斜め前に当たるので、勇壮な姿がよく映えていた。
「お囃子も目の前ですからやかましかもしれませんけど、ゆっくり楽しんでください。」
女将の挨拶の通り、程なく囃子方の町衆がにぎやかな祇園囃子を始めた。
♪コンコンチキチンコンチキチン♪
「鱧~。今年はじめて。」
落としより、くず寄せが好きな私は、超ご機嫌でいただいた。
鱧の天ぷらも、おいしかった!
正統派な京料理に満足してると、由未ちゃんからメール受信。
すぐ近くの珈琲専門店にいるらしい。
「食後に美味しいコーヒーをいただきたいわ。」
祖母の言葉に、母がうなずいた。
「じゃ、由未ちゃんに挨拶がてら、押し掛けましょうか。」
……由未ちゃん、びっくりしはるやろうなあ。



