おいてけぼりティーンネイジャー

「なんでですか?……平原先生、暎さんのこと、ご存じですよね?確かに困ったとこもいっぱいあらはるけど、根は真面目な優しい人です。屈折してはるけど、少年のような真っ直ぐなところもある人です。年の差はあるけど、今時、16年ぐらい珍しくないんじゃないですか?」

なるべく冷静にそう言った。
平原先生は悲しそうに頭を振った。

「そうじゃないのよ。知織ちゃん。……一条がいい奴なのは私も知ってる。でも、知織ちゃんと一条が付き合うのは認められない。」

何だか話が通じなさそうなので、私は方向転換を試みた。
「認められないって言われても……。淫行で訴えますか?……そういう関係じゃないから成立しないでしょうけど。」

「……プラトニックってこと?……一条が?」
平原先生は信じられないらしく、ぽかーんとしていた。

……効果ありそう。

「はい。本や音楽の話をするだけで、性的なことは一切ありません。」
きっぱりそう言うと、平原先生は首をかしげた。

「もしかして……プラトン?」
「?……プラトンは確かによく引き合いに出してはりますね。昔からなんですか?」
私がそう聞くと、平原先生は曖昧にうなずいた。

「そう。知織ちゃんも、プラトンがわかる子なのね……それで……」
平原先生は天を仰いでから、ため息をついた。
「……いいわ。とりあえずは、安心した。ねえ、知織ちゃん?一条はいい奴だけど、悪い男でもあるの。知織ちゃんが傷つくことをわかってて見逃せないの。……今すぐとは言わない。でも、そういう関係になる前に、別れてほしい。もしくは、他に好きな男の子を作ってほしい。教師としてでも、一条の先輩としてでもなく、裕子のいとことして、お願いします。」
そう言って、平原先生は机に手をついて頭を下げた。

「……先生?」

そこまでする意味がわからず、私はただ呆然と見ていた。



翌週末、平原先生や祖父母と共に、新幹線で京都へ帰った。
駅構内には祇園囃子が流れ。真っ昼間なのに浴衣のヒトがいっぱいいた。
地下鉄に乗り換えて北上する。
地上に父が迎えに来てくれてた。

「お父さ~ん!ただいま~。」
父に駆け寄ってしがみついた。

「ま~、おひいさん、ちょっとの間で綺麗にならはって。元気でしたか?伯父さん伯母さん、知織をありがとうございます。まゆさん、今日は引率ありがとうございます。」

父の車で実家に帰り着くと、母がうれしそうに飛び出してきた。

「まゆちゃん!」
まず平原先生に駆け寄った母に驚いた。