おいてけぼりティーンネイジャー

……わああああ。

うれしいけど、複雑な気分。

お兄さんが私の唇に触れたところも見られてたわけね。
そりゃ、不機嫌になるか……はは。

私は暎さんの腕に両手を添えて、その胸に頬を擦り付けた。
「今、こうしてても?ずるい、って思いますか?」

「……俺の!って強く思う。」
あかん、苦笑いしか出ない。
いや、かわいいけどさ。

「じゃ~あ、来週の土曜日の件、真面目に考えはったほうがいいかもよ?私、家族でご飯食べた後、由未ちゃんと合流する予定ねん。暎さんと逢えなければ、そのまま由未ちゃん家に移動してお泊まりさせてもらうことになると思うし。」

……お兄さんは誰かとデートで帰宅しはらへん可能性が高そうだけど、私は敢えてそこまで言わずに思わせぶりに言った。

「実家に泊まれよ。」
「え~。でも、もう由未ちゃんに言うてしもたもん。」

暎さんはため息をついて言った。
「マネージャーに探してもらったけど、市内のホテルは取れなかったよ。」

え……。
既に探してくれてたんや……。
それだけで、うれしい。
「そっか。ありがと。……IDEAは奈良に?」

「ああ。……来るかい?」

ええっ!?

「いいのっ!?」
「ああ。それなら融通効くそうだ。……祇園祭関係なくなるから、本末転倒だけどな。」

確かに。

「夜と翌朝と独りで往復させるのも可哀想だし、今回は無理しないほうがいいとも思うんだけど、な。」

……そうかもしれない。

「でも、逢いたかったの。多少の無理なら、する。奈良まで行っていいですか?」
私の問いに、暎さんは優しい瞳で微笑んだ。


翌日の朝礼で担任から、放課後に平原先生を訪ねるように告げられた。
……私が逃げられないように、わざわざ担任を通したのだろうか。
手強いな。

暎さんに一応報告メールを送信しておいたけれど、今日は長時間に及ぶ番組収録らしいので返事は期待できない。
1人でがんばるもん!
気合いを入れて、私は体育教官室の戸をノックした。

平原先生に連れられたのは、職員用の会議室。
「さて。聞かせてもらいましょうか。一条と……IDEAの一条 暎(はゆる)とはいつから?」

なんだろう。
違和感を覚えて、私はちょっと抵抗を示した。

「平原先生、中学の時、同じ陸上部の先輩後輩だったと聞きました。芸能人じゃなくて1人の人間として、暎さんと私を見てもらえませんか?」

平原先生は、じろりと私を見た。

「もとより!芸能人とか関係なく!一条は、ダメ。絶対ダメだから。」

そんな、頭ごなしに言われて納得できるわけがない。