おいてけぼりティーンネイジャー

「おいで。」
暎さんはわざわざ私の手を取って、あの派手な車に誘(いざな)った。

「一条っ!その子はダメだって!」
平原先生がフェンスを乗り越えかねない勢いでそう叫んでる。

「もう遅いよ。」
暎さんは、平原先生に敬礼のようなサインを送り、ついでに義人さんにも軽く会釈してから車に乗り込んで車を出した。

私は、おもむろに携帯電話を取り出し、ストラップについたGPS付防犯ブザーの電源を完全にオフにした。

「それ?噂のGPS。」
「うん。小っちゃいでしょ?」
「ああ、それなら邪魔にならないね。……で、さっきのイケメンくんは?」
暎さんの声が硬質になった。

「由未ちゃんのお兄さんの義人さん……心配した?ナンパやと思った?」
「あー。あの子の。そっか。じゃ、ナンパじゃなくて浮気だな。 」
暎さんの声も言葉も信じられないぐらい冷たくて、私は自分の耳を疑った。

ひどい……
ポロポロと涙がこぼれ落ちた。

「泣くなよ。反論しろよ。……それじゃ認めたようなもんだろ。」
暎さんの声も、なんだか痛ましかった。

「何でそうなるねんな……さっき平原先生に『マジ』って言ってくれてうれしかったのに。もういやや。降りるわ。帰るっ!」
そう言って、私は助手席のドアを開けた。

慌てて暎さんが手元でロックをかけようとしたようだけど、私のほうが行動が早かったので、走行中なのに車のドアが開いた。

「危ないって!」
「降りる!」

シートベルトをはずそうとしたけど、暎さんはすぐに路肩に車をとめると、片手にシートベルトを引っ張ったまま、私の肩を抱き寄せた。
「ごめんっ!知織があんまりうれしそうな顔してたから、むかついたっ!」

……焼き餅焼いたってこと?

「いい歳して……一回りも違う学生に、嫉妬ですか?」
肩に食い込むシートベルトが痛くて、もぞもぞと動きながらそう聞いた。

「一回り以上、歳下の子を好きになってから、イロイロと臆病になっちゃってね。」
暎さんは、やっとシートベルトから手を離してくれた。

肩、赤くなっちゃったんじゃないかな……痛~い!
とりあえず中途半端に開いてるドアをちゃんと閉めてから、暎さんに向き合った。

「臆病なヒトが平原先生にあんなこと言いますかぁ?明日が怖いですわ……もう!」
そう言ってから両手を暎さんの首に回してしがみついた。

「ごめん。俺、本気で知織のこと愛しくて大事に想ってるのにさ、知織には拒否られるし、他の男と仲良さそうなとこ見ちゃったし、まゆ先輩に『ちょっかい』って言われて、ついカッとした。」

暎さんの細い髪が私の首筋を撫でるようにさわさわ動いてる。