おいてけぼりティーンネイジャー

「制服もかわいいやん。へ~、いいね。」
すぐに着替えて飛び出してきた私に、義人さんが手を伸ばす。
「荷物おっきいね。貸して。持つわ。」

「ありがとう~……ございます。」
何か、改めて緊張してきた。
今までと違う気がする。

……ちゃんと口説く対象として扱われてるというか……

「ほな行こか~。ごめんな、こっちでは父親の会社の車やしちょっとごっついけど……」
そう言われて案内されたのは、銀のベンツ。

「まあ、王子様のクラッシックな白いベントレーに比べりゃ、コンパクトやけどな~。」
そうつぶやきながら車を出発させた義人さんに首をかしげる。

「……よぉ知ってますねえ。暎(はゆる)さんの車まで。」
「さっきまで隣に駐まってたで。知織ちゃん待ってたみたいやけど、車降りてすぐ生徒に騒がれはって。」

え!?

「一条氏、おもしろいヒトやなあ。美人の女の先生に怒られて平謝りしてはったわ。」

……あ~……平原まゆ先生に見つかったんだ……

「気になる?」
私は無意識にうなずいた。
「……ほな、行くか?一条氏のとこ。ちゃんと仲直りするんやったら解放したげるわ。できるか?」
義人さんにそう聞かれて、私は悲しくなった。

「わからへん。暎さん、怒ってはったら……私、また、キレるかも。」

ブーッと義人さんがクラクションを鳴らした。

何!?

「……怒ってたらわざわざ来ないし、あんなに落ち込んでへんのちゃうか?」
そう言いながら義人さんが車を停めた。

すぐ前に、見慣れたいかつい白いベントレーが駐まってた。
学校の周りをぐるっと回っただけやったんや……。

義人さんは車を降りて、助手席のほうに回って、ドアを開けてくれた。
「ほら、行っといで。」
荷物を渡され、背中を優しく押された。

車から、暎さんが降りてきた。
何か、人相が違う……目の下にくまができてるし、顔色が悪い?
「知織……」
暎さんの声は怒ってなかった。

ホッとして私は暎さんに近づく。

「こらーっ!一条!うちの生徒にちょっかい出すなー!」
フェンスの向こうから、平原先生が叫んだ。

背後で、義人さんが吹き出して笑ってる。

既に下校しつつある生徒が数人、派手な暎さんに気づいてざわつき始めた。

この状況……やばいんじゃない?
どうしよう?

暎さんを見つめると、その瞳がギラッと不敵に光った。
すーっと大きく息を吸い込んでから、暎さんは平原先生に向かって叫んだ。
「まゆせんぱーい!俺、マジだからっ!止めても無駄ーっ!」

ひやあああっ!

このヒト、すごいこと言っちゃったよ~。