『朝食はどうされますか?
何か少しでも召し上がられたほうがいいと思いますが…』

『…いや、いい。食べたくない』

そう言うと、水の入ったグラスを一気に飲み干す。

普段からあまりちゃんとした食事をとらないユアンが病気にでもならないかと、ヨハンは本気で心配している。

『しかし、ユアン様…』

そのとき、ヨハンの言葉を遮るように部屋の扉が勢いよく叩かれると、返事を待つことなく開かれた。

『ユアン様、失礼しますぞ。
お目覚めになられていますかな?』

威圧感のあるよく通る声が部屋に響くと、ずかずかと体格のいい男が入ってきた。

ベッドに腰掛けているユアンを見つけると、にこにこと機嫌のいい笑顔を浮かべながら近づいてくる。

あまりの勢いに呆気にとられていたヨハンは、慌ててすばやくユアンの前に立ちはだかった。

『失礼ですが、ユアン様はお着替えの途中でございます。
お話はそれからでよろしいでしょうか』

『おお!そうでしたか!
いや、それは大変失礼しました。
ユアン様、おはようございます』

悪びれた様子もなく頭の後ろに手を回して豪快に笑うと、男はユアンに挨拶した。