ユアンが幼い頃から教育係も務めていたヨハンは、ユアンが唯一気を許せる人物ともいえる。

ユアンの成長をある意味一番近くで見てきた、身内のような存在だった。

『ユアン様、またそんな格好でお休みになられて…
いつも申しているではないですか。
お着替えはいつも用意してある物をお召しになってくださいと』

『ヨハン…
朝から説教はやめてくれ。
頭が痛くなる』

『昨夜のワインが残っておられるのではないですか?
ユアン様はあまり強くないですからね。
二日酔いにいいハーブティーをいれましょうか』

『いや、水でいい。
昨夜はそんなに飲んでないよ』

ユアンはヨハンの申し出を断ると、ゆっくりとベッドの縁に腰掛けた。

両手でおでこを支えるようにして項垂れると、大きく息を吐き出す。

『しかし…ご気分が優れないのでは?
少々顔色も悪いかと思いますが…』

『いつもと変わらない。
よく眠れなかったんだ』

『そうですか…』

話しながらもすぐグラスに水を注ぎ、ヨハンはユアンにそれを差し出す。

朝はだいたいこんな調子で、ユアンはなかなか動き出すことができない。