腹黒王子と秘密の契約

ありえないと大騒ぎしているクレアに、アランは鬱陶しそうにため息を吐く。

人気モデルのクレアに対してそんなことを言うのもアランだけではないかと、リリーは苦笑した。

あいかわらずの二人の間で、やっといつもの日常に戻ってきたと心から安心できていた。

「本当に言葉が乱暴なんだから！
今日はパーティーのためにせっかくドレスアップしてるのよ！？
少しは褒めたりとかできないのかしら！？」

「お前はしょっちゅう夜遊びでそんな格好してるだろ。
別に特別でもなんでもない」

「夜遊び、じゃなくてパーティーよ！
わたしにとっては仕事でもあるんだから！
まったく、せっかくのイケメンが台無しね。
それに、わたしじゃなくてリリーのことよ。
わたしがコーディネートしたの！
すごく素敵でしょ？」

クレアは自慢気にリリーの両肩に後ろから手を置くと、アランの方へと押し出した。

瞬間、かなりの至近距離でリリーとアランの視線がぶつかる。

するとアランは、なぜかすぐに顔を背けてしまった。

あまりにもあからさまな反応に、リリーもクレアも不思議そうに様子のおかしいアランを見つめている。