腹黒王子と秘密の契約


「あの…本当に、ありがとうございました!」

とにかく感謝の気持ちを伝えようと、リリーは一歩前に踏み出すと深々とお辞儀をする。

そしてゆっくりと顔を上げると、その場で立ち止まり碧い瞳を優しく細めたクリフォードと視線が交わった。

リリーに微笑みかけたクリフォードは、そのまま何も言わずに立ち去っていく。

激しい胸の鼓動を感じながら、リリーはもうすっかり酔いが覚めたはずの頬をまた赤く染めて、遠ざかるクリフォードの背中を見つめ続けていた。





「リリー?」

「…え?」

クリフォードが長い廊下の先に見えなくなっても、いつまでも動かないリリーにそっと声を掛けたのはクレアだった。

その様子を黙って見ていたアランも、短く言い放つ。

「帰るぞ」

「それでは、こちらの通用口からどうぞ。
ご案内いたします」