「あ…」

目が合ったのは一瞬ですぐに逸らされてしまったけれど、その青年のとても珍しい瞳の色にリリーは目を奪われた。

「バイオレット…キレイな瞳ですね」

鮮やかな紫色の瞳に見惚れて思わず声を掛けてしまったけれど、聞こえていないのかなぜか全く反応がない。

「あの…」

『俺に話しかけるな』

リリーが再び口を開こうとすると、それに被せるように凜とした声で遮られた。

「え、今の言葉…」

リリーを見ようともせず、冷たく言い放つ言葉はノルディアの言語ではない。

冷たくあしらわれたことよりも、ノルディア城のパーティーでその言語を聞くとは思わなかったリリーは、驚いて隣にいる青年をまじまじと見つめた。

『ギルト王国の方なんですか?』

たった今拒絶されたことも忘れて、リリーが尋ねる。

ギルト王国とはノルディア王国より遥か北に位置する小さな島国で、一年のほとんどが雪に閉ざされている。
美しい幻想的な自然に満ち溢れた、妖精が住んでいるといわれている神秘の国だ。