あいかわらず壁の花のままでいるリリーは、ついに3杯目のワインを手にしていた。

飲み過ぎないようにしなければいけないことはわかっているけれど、パーティー会場で何もせずただ立っているわけにもいかない。

それでもパーティーを楽しむ輪の中に戻る勇気もないとなると、大広間の隅でワインを飲むくらいしかすることがなかったのだ。

仕方なく少しずつグラスを傾けていたけれど、気づいたらかなり飲んでしまっている。

少し酔いが回ってきたリリーが、そろそろクレアも戻ってくるだろうかと考えながら、なにげなくふと視線を横にずらしたときだった。

「あれ…」

そこにはいつからいたのか、見知らぬ青年がリリーと同じく壁にもたれるように立っていた。

リリーのように、たったひとりで静かにワインを飲んでいる。

柔らかそうな髪は綺麗な銀色で、横顔は少しあどけなさが残るような気がするけれど、神秘的なオーラを放っていてなぜか目が離せない。

すると向けられる視線に気づいたのか、青年はリリーをちらりと一瞥した。