「はーい。
もうそんな時間なんですね。
わぁ!今日はクリームシチュー!
美味しそ〜」

客のいなくなった店内で、テーブルを布巾でキレイに拭いていたリリーは、ヘレンに返事をするとカウンターに並ぶ夕食を覗き込んで喜んだ。

「だんだん寒くなってきたものね。
さ!冷めないうちにどうぞ〜。
今日もお疲れさま」

「お疲れさまです!
陽も落ちるのも早くなりましたよね。
もうすっかり秋ですよ」

エプロンを外して、カウンターの席に着く。

外はすっかり真っ暗で、人の姿もまばらになっていた。

「いただきます!」

「召し上がれ」

リリーが食事を始めると、美味しそうに食べるその姿をカウンターの中にいるマーカスが嬉しそうに見ている。

「食べ終わったら、送っていこうか?
もう暗いし、危ないだろう」

「そうね。
心配だし…あなた、そうしてあげて」

帰りが少し遅くなると必ずと言っていいほど、マーカスとヘレンのお決まりのやりとりだった。

リリーは口一杯に頬張っていたパンを慌てて飲み込むと、勢いよく首を振る。