パーティーのこともやはり断ろうと思ったけれど、毎日嬉しそうにその話をするクレアに言い出すことはできなかった。

まだ留学生活の終わりが完全に決まったわけではない。

近い将来そうなるとしても、今リリーがそんなことを話せば、クレアのせっかくの楽しい気分をぶち壊してしまう。

それに加えて学費も全て援助するなどと言い出しかねないような気もして、ますますクレアに相談することは憚られた。

そんなことは絶対に頼むことはできない。

とにかく今は、まだ話すべきではないとリリーは決めたのだ。





「リリー?もうそろそろ準備しようと思うんだけど」

「あ…うん!」

部屋の扉を叩く音とクレアの声に、ずっと部屋に閉じこもり考え込んでいたリリーは意識を呼び戻されてハッとする。

慌ててドアを開けると、そこにはクレアだけではなく、何度か見たことがあるようなクレアの家のメイド達が並んでいた。

「その…メイドさん方は?」

「うふふ。今夜、リリーに魔法をかけてくれる魔法使いよ」

「魔法…?」

何かを企むいたずらっ子のような笑顔のクレアを、リリーは栗色の瞳をぱちくりとさせて見つめ返した。