「はぁ…」

自分の部屋に飾ってあるドレスを見つめて、リリーはもう何度目かもわからない深く長いため息を吐く。

座っていたベッドから離れると、窓にゆっくりと近付き、外の景色をぼんやりと眺めた。

毎日見慣れている景色は今、色とりどりの花、風船や旗などで賑やかに装飾されている。

王都の中心地にはたくさんの出店も並び、かなり盛り上がっていることだろう。

今日からの三日間、ノルディア王国は秋の祭典ワイン祭により、国中がお祭りムードに包まれるのだ。

そしてついに今夜、ノルディア城では華やかなパーティーが開かれる。

「そろそろ準備しないとかな…」

心待ちにしていたパーティーのはずなのに、リリーの気持ちは沈んでいた。

その原因は、数日前に届いた両親からの手紙にある。

手紙には、両親のレストランの経営がかなり厳しいことや、このままだと学費を含む仕送りも難しくなるかもしれないということが書かれていた。

もうかなり前から無理をしていたらしく、とうとうこのままでは限界かもしれないというところまできて、仕方なく手紙を送ったらしい。