腹黒王子と秘密の契約

「でも学園の女の子達はそんなアランに夢中みたいだよね。
本人はそうやって騒がれるの、すごく嫌みたいだけど」

帰ってきたまま話し込んでいたリリーは、そう言いながら秋物のコートを脱ぐと、自分の部屋へと歩き出す。

クローゼットにコートを掛けていると、リリーの後ろをついて来ていたクレアは大げさに肩を竦めてみせた。

「わたしは全く理解できないけどね。
確かに顔はいいけど、男はもっと優しくないと。
そして、わたしだけに愛を囁いて甘やかしてくれるような男じゃなきゃ」

「ふふふ」

今度は胸の前で手を組んでうっとりとしているクレアを見て、リリーが楽しそうに笑う。

「だからねリリー、笑ってる場合じゃないの。
ね、こっちに来て！」

「え？」

クレアはリリーの手を取ると、リビングを挟んで向かいにある自分の部屋へと引っ張るようにして連れて行く。

ドアを開けて、そこに押し込まれたリリーは驚きのあまり目を丸くした。

リリーの目に飛び込んできたのは、色鮮やかで煌びやかなドレス。

それも何十着あるのかという数だった。