口に出してみてもやはり信じられないけれど、ユアンに感じた特別な雰囲気は、高貴な王家の血筋によるものからだったのかもしれない。

「クリフォード王子とはタイプが違うけど、儚げで繊細な感じが素敵だったわね」

「え?」

「ユアン王陛下よ。リリーもそう思ったでしょう?」

「う、うん…そう、だね…」

クレアはあいかわらずの様子で、楽しそうにユアンの印象を話している。

リリーは信じがたい事実を受け止めながらも、クレアの話にぼんやりと相づちを打つ。

そして今、目の前を通り過ぎたユアンの様子を思い出していた。

ほんの数秒のことではあったけれど、リリーと視線が交わった瞬間のユアンの瞳は驚きで見開かれ、その直後なぜかまるで泣き出してしまいそうなほど寂しげに揺れていた。

まだ出会ったばかりではあるけれど、今まで何度か見たその悲しみに曇る表情が気がかりで、走り去っていくユアン達を乗せたオープンカーを、リリーは見えなくなるまで見つめていた。