ノルディア国民の大歓声に迎えられ、ユアンを乗せたオープンカーは王都の街並みをゆっくりと走っている。

ノルディア城を出発し、王都のメインストリートを辿り、再び城へと戻るらしい。

ギルト王国の国王として王族の正装に身を包んだユアンの隣には、同じくノルディア王国の王子である正装姿のクリフォードも同乗していた。

沿道を埋め尽くす人々はノルディア王国とギルト王国の国旗を振り、歓迎ムード一色だ。

クリフォードは完璧な笑顔を崩すことなく、時折手を振り、大きな歓声に応えている。

ユアンも穏やかな微笑を浮かべているように見えるけれど、心の中を無にすることで負の感情を押し殺していた。

どこか虚ろな紫の瞳は、大観衆の中心にいても何も映していないように見える。

日々忙しなく行う公務の中でも、今のように大勢の人前に出ることを特に嫌っていたユアンは、ただこの時が経つのをじっと耐え待っているだけだった。

クリフォードもぼんやりと無気力なユアンの様子に気づいてはいたけれど、ユアンの心情などはどうでもよい。

ノルディア王国の滞在期間中は、ギルト王国の国王としての役目を最低限果たしてさえくれればそれでよいと思っている。