目の前には該さんが、三叉槍を持って立っている。仮にも命の恩人。役に立たなきゃ…

「そう怖がる事はありません。痛みは感じない…」

私はそっと三叉槍を受け取る。目を瞑り、自分に三叉槍を突き刺す。確かに痛みは無いけど、私の中に何かが入って行く感じ。


「やっと終わりましたね。」

「はい…。」

該さんは目の前には居なくなった。


「僕は直接雪の中にいるわけではありません。僕は常に僕の中にいます。けれど、地獄道に葬られていますがね…。人間道(ここ)にいる時は雪の中にいますが…」

複雑な説明で、少しだけ分からないけど、私はちゃんと役に立た。それだけで十分だから…

「該さんの本当の姿がここに現れることは…?」

「雪の力があれば、短時間ですが人間のようになれます。」

「私の…力…?私には何の能力も無いです…」

柔らかい笑顔を私に向けた。

「雪にはちゃんと力がありますよ。」

一拍置いて、真面目な顔をする。

「雪はさっきの悪霊が見えてましたよね?それは、霊感を持っているからです。僕が雪の中に入れたのも、霊感を持っているからです。霊感は人間なら誰でも持っています。それが、強い者と弱い者に別れているだけ。」

霊感…?私に…?