「いっちゃん………ッ」

「わぁぁ!何泣いてんの!」

「だって、だってぇぇぇ」



教室の前でいきなり泣き出す私に慌てて五十鈴はハンカチを取り出した。



「も~、クラス離れたくらいで泣かないの!」

「卒業してからずっとお願いしてたのにぃ」

「はいはい。ほら、涙吹いて!行ってきなさい」



幼稚園児のように泣く私を一生懸命なだめている。



「休み時間とか会いに行くから、ね?」

「…うん」




じゃあね!と元気よく手を振り、一番端の教室に走っていった。




と、友達できるかな?

そうだ、席順見てこよう。
まずは周りの席のこと仲良くなろう!



教室の後ろにいた妃は一番前の黒板へと足を運ぶ。
A4くらいの紙に印刷されてある自分の名前を探す。




やっぱり一番前か…
隣の席は?
《おおかみあらた》くん?
珍しい名前だな~


どんな人なんだろう。
優しいのかな?無愛想な人だったらどうしよう…
おおかみって名前だし、なんか食べられちゃいそうで怖い、、、、



百面相をしながら席につきふぅとため息を漏らす。




とにかくだ!ずっといっちゃんに頼ってばかりじゃだめだよね!
私も自分で頑張らないと!!



小さくガッツポーズをすると後ろからトントンと肩を叩かれる。




「なんですか?」

「やっぱり可愛い子だった!」




後ろに座っていたのは優しそうな笑みを浮かべる少女だった。



「私、入野茉李!さっき横通りかかって可愛い子だなぁって思ってたら前の席に座ったから話しかけちゃった!」

「えぇ!?あ、ありがとう…?有栖川妃っていいますッ」

「有栖川?珍しい苗字だね?名前も可愛い~」




突然褒められて戸惑っている私の手を握り、お構い無しにぶんぶんと上下に動かした。





「えぇと、茉李ちゃん?はどこの中学から来たの?」

「茉李でいいよ!!」

「じゃ、じゃあ…まつ、り」



茉李の名前を呼ぶ。
呼び捨てに慣れてない妃には新鮮な響きで中々スムーズに口に出せない。




こういうのなんだか恥ずかしい…
でも嬉しいなぁ。
茉李が近くの席で良かった…!




「妃の隣の席の人どんな人なんだろうね?」


ニヤリと笑う茉李にきょとんとしている妃。




「大神新くんのこと」

「どんな人なんだろうね、優しい人だといいなぁ」



隣の席の人が優しいと授業とかも楽しそうだし。



勝手に妄想を膨らましながら茉李に微笑む。




「…!なんか、妃ってすっごい可愛いね」

「そそそそ、そんなことないよ!茉李の方が可愛いと思うけどな~?」

「えー?そうかな?」

「うんうんッ!人見知りの私でもすぐに話せちゃうし、すっごいよ」

「そう褒められると照れる」






照れながらも優しく微笑む彼女。




「あ、来た。大神~!!」



茉李の一言に教室中が一気にざわめく。