ゆっくりとスエットに着替えると、わたしはリビングへと下りた。
お父さんは今、海外の会社で働いていて、お母さんは記者だからあんまり帰ってこない。
だから事実この家は、兄と二人暮らしなんだよね。…嫌だけど。
兄は家事が得意じゃないから、全般わたし。
わたしが体調を崩した時は、全力で兄が看病してくれるけど正直こわい。
お粥はなんか変な味するし、この前なんか濡れタオルじゃなくて、市販の冷えピタを貼りやがったんだよ?わたし、冷えピタ嫌いなのに…。
リビングには、椅子に座る兄が半分寝ながらスマホをいじっていた。
「おはよう、遼さん」
「ひゆりちゃん!おはよっ」
途端に椅子から立ち上がり、わたしの元へと駆け寄ってきた。
おぉ…とても怖い。
実は、歳が離れてるからどうしても『遼さん』と呼んでしまうの。
遼さんはわたしのこと、ずーっと『ひゆりちゃん』って呼んでたけど。
「…相変わらず、だね」
「なんだよー俺、ひゆりちゃんのこと大好きなんだよー?」
「香奈美さんに言っちゃうよ?」
香奈美さん。
遼さんの彼女さんの、池野 香奈美【いけの かなみ】さん。
とっても美人さんなんです!
見惚れちゃいそうなくらい。
「…ご、ごめんごめん…」
「じゃあ、ゆるーいジョギング、しょうか」
ゆるーいジョギング。
ジョギングとは言っても、走るのは遼さんだけで、わたしはウォーキングです。
走ったら遼さんやお母さんに怒られちゃう。

