長い夏休み。
私達は、京都、神戸、須磨を行き来して過ごした。

……ずっと須磨に居てもいいぐらいだったけれど、お母さまともご一緒に過ごしたかったのと、東京から由未ちゃんが何度も京都に帰ってたから。

秋の結婚式に向けて京都でのお仕度が山のようにあるらしい。
「ご家族にも婚約者さんにも愛されて、由未ちゃん、キラッキラ輝いて見えよーで。」
久しぶりに会った由未ちゃんに、昔よく言われた言葉を返してみた。

由未ちゃんは頬を染めた。
「あおいちゃんは、相変わらず美人やわぁ。子供ちゃんもおっきくなってんろうねえ。今日は?小門先輩が?」

「うん。頼之さんが道場巡りに連れとーねん。なんか武道習わせるんやけど、うちらが決めるんじゃなくて、光本人が気に入ったもんをさせたいねんて。」
「……親馬鹿?って言うていいの?それ。」
「かなり親馬鹿!私より可愛がってかいがいしく世話してくれよーよ。……まあ、1回生の私より4回生の頼之さんのほうが暇やしね。」

由未ちゃんは、ほーっとため息をついた。
「うらやましい。小門先輩って完璧やねえ。かっこよくて頭がよくてサッカー上手くてしかも優しくて家事もできる!?すごすぎる!もてるやろうね~~~。」

「ん?でも、由未ちゃんの婚約者さんも、由未ちゃんと同じで東大出てはるんでしょ?優しそうやし……」
由未ちゃんがあまりにも表情を歪めたので、私はそれ以上言葉を続けられなくなった。
何か、ストレス溜まってそう。

「もう、ねえ……生活能力なさ過ぎて……」
「お公家さんやから?」
私がそう聞くと、由未ちゃんは苦笑した。

「そうかも。そういうことか。」
そう言ってため息をついた由未ちゃんは、それでも幸せそうだった。


由未ちゃんと別れて帰宅すると、既に頼之さんと光は帰宅していた。
「あーちゃん!僕、空手するー!」
光が私に飛びついてきて、キラキラした瞳で見上げて言った。

「どこ行ってきたん?寸止め?フルコンタクト?」
「……それはまだこれからやな。とりあえず空手にしぼるらしいわ。」

剣道押しだった頼之さんが苦笑した。
「あおいの望み通りになってきとーな。」

光が私と頼之さんの顔を代わる代わるに見る。
「いや、かまへん。光のやりたいもんを探しとーねんから。」
頼之さんが慌てて光の頭を撫でた。

「由未ちゃんが~、頼之さんのこと完璧って言うとったよ。いっぱいもてた?てか今も、もててる?」
須磨へと向かう車の中、光が寝たのを確認してから、そう聞いてみた。

「……どやろ。俺、小っちゃい頃から他人と交わらへんかったからなあ。1人で連珠しとるほうが好きやったし。中学のサッカー部でも何か浮いてしまうってゆーか、対等な友達もいいひんくて。根暗で他人に無関心やったから、もてるゆーてもしれとったと思うで。」

意外な言葉が返ってきて、驚いた。