帰宅後、両親は私を責めた。
「出て行け。」
とまで言われた。

そして、いつから準備していたのか……私に全寮制の中学校のパンフレットを突きつけた。
本気で、彩瀬と私との仲を引き裂くつもりらしい。

「彩瀬も一緒なら、いいよ。」
そう言うと、母に頬を叩かれた。
「いい加減にしなさい!この、疫病神!」

……実の娘に対して、何てことを言うんだろう。
確かに私は、可愛げのない娘だろうけど、それにしてもひどい言い草だ。

この人たちは、どうしてこんなにも私を疎むのだろう。
もしかして、血のつながりがない、とか?
本当に厄介者なら、無理して育てなくてもいいのに。

額に青筋を立てて怒りに震えている母の整った顔を見て、私は思わず笑ってしまった。
「何がおかしいの!」
……似てるから、だ。
この顔は、確かに私との血のつながりを色濃く示していた。

だったら、何故?
母親の目を見据えていると、今度は母が泣き出した。
うんざりする。

私は自分の部屋へ戻って、膝を抱えた。
彩瀬に会いたい。
それだけが私の願いだった。

夜中に、階下でバタバタと音がした。
そっと階段を降りて様子をうかがう。
両親は罵り合いながら、服に着替えて出る準備をしていた。

アヤセバカリドウシテコンナメニアウンダ

アオイノセイダ

2人が出て行ってから、私もまた着替えて飛び出した。
彩瀬に何があったのか、わからないけれど、じっとしてられなかった。

また、誰かに襲われたのだろうか。
とにかく、彩瀬が消えたことだけは確かのようだ。
無事でいてほしい。
私は彩瀬が入院している病院へと走った。

病院にはパトカーが静かに停まり、不気味な赤い光を撒き散らせていた。
いかつい警察官に、舌打ちする。
あんな熊みたいなおっさん、彩瀬がまた怯えてしまうじゃないか。

私は、病院の通用口から入り込み、彩瀬の気持ちになって考えてみた。
……第三者が関与している場合はしょうがないとして、もしそうじゃないとしたら?
彩瀬の意識が戻ったら、まず、何を考えて何をする?
答えは1つしかない。
彩瀬は私を探すだろう。

私は、各階の病棟の待合室を回った。
真夜中の院内は、真っ暗な中にところどころ緑の出口表示が光り、ちょっと不気味。
怖がりの彩瀬は、どこかで怯えてないだろうか。

彩瀬が入院したフロアには4つの病棟があった。
その内2つが外科病棟。
さすがに同じ外科病棟はくまなく探してくれてるだろう。
残る2つの病棟は?

私はナースステーションの下をくぐり抜けて奥へ進んだ。
不意にすぐ後ろでカラカラと小さな音をたてて戸が開いた。
トイレ?

出てきたおじさんは、私を見て、ギクッと明らかに動揺した。

そそくさと病棟から出ていく。