「……はい。」


ずっと、1人で淋しかった。

彩瀬にかまってもらえなくて……頼之さんとなら楽しい時間を過ごせるってわかってて……できなくて……私も、逢いたかった。


あーあ。

彩瀬への執着さえ捨てれば、頼之さんに完落ちできるんだろうに。


夕方18時頃、頼之さんがマンションまで送ってくれた。

……すぐ近くだから別によかったんだけど。


「明日は、俺ん家に来ぉへん?」

「行く。五目並べリベンジする。」


私はともかく、頼之さんも期末試験の勉強しなくていいのかな。

「……吉川も誘ってやろうか?……あ、タイミングばっちり。吉川-!」

頼之さんが手を挙げて叫ぶ。


ゆらりと生気のない歩みの彩瀬が近づいてきた。

改めてこうして見ると、彩瀬、本当に……顔色は悪いし、頬がげっそりこけてるし、別人みたい。

私の胸がズキズキと痛み出した。


「え……小門くん……デート?」

彩瀬は無表情でそう聞いた。


「いや。俺が勝手に待ち伏せしてん。明日、うち、来ん?」

頼之さんの誘いに、彩瀬はちょっとためらってから、申し訳なさそうに言った。

「僕は遠慮しとくよ。テスト勉強したいし。……妹をよろしく。」


テスト勉強。

彩瀬がテスト勉強。

嘘ばっかり。


つい、暗~い笑いが漏れそうになる。


そんなに、私と一緒にいたくない?

そんなに、私を頼之さんとくっつけたい?


もう、いいよ。

私は静かに深呼吸をした。


「じゃあ頼之さん、またあした。」

「おー。迎えに行くから待っとけよ。」


頼之さんに手を振ってから、既にマンションのエントランスに入ってく彩瀬を追いかけた。

無言でエレベーターに乗る。

2階なのですぐに到着。

エレベーターを出てから、彩瀬が言った。

「小門くん、ずっと、あーに逢いたがってたよ。今日、ちゃんと逢えたならよかったよ。」


……彩瀬に、あーって呼んでもらったの、久しぶりだ。

毎日毎夜聞いていたはずだったのに。

同じ家に帰るというのに、他人以上に心が遠い。


「私も逢いたかったみたい。」

多少挑発するつもりで、そう言ってみた。


けど彩瀬は、無表情のまま

「そう。」

と返事した。


……それだけ、か。

虚しい。


私は、無駄とは思いつつ言葉を継いだ。

「頼之さん、彩瀬よりも私を甘やかしてくれる宣言してたよ。」


一瞬の間を置いて、彩瀬は私に笑顔を見せた。

「よかったね。あーは、幸せだね。」


……目が笑ってないし。

ダメだ。

むかついてきた。


「幸せかどうかは、私が決めることやから。彩瀬には関係ない。」


こんなこと言いたくないのに。

私を幸せにしてくれるのは、彩瀬のはずなのに。


どんどん捻れていく。

もう戻れないの?


助けて……。

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