妖しの姫と天才剣士



近づいて来る人影に私は体を強張らせた。



「総司……」

「あ……れ? 茅野ちゃん? 何? こんな時間に」



見られたくなかった。


総司に会った事で決意が崩れ去って行くのを感じる。


私の意思って、こんなに弱い物だったっけ……?


まだ、壊す訳にはいかないから。


この場で二人を引き離してでも逃げなきゃ。


迷惑を掛けるわけには、いかないのに。



「総司、まだ起きてたのかよ」

「一回寝たんですけど寝付けなくて」

「……何だよ、それは」

「良いじゃ無いですか。それより二人はなんで?」

「……散歩」

「はぁああ⁉︎ あり得ないって! 危なすぎ!」



ごつんと頭を叩かれる。


手加減はしてくれたんだろうけど痛い……っ!



「もう少し考えなよ! 今はどこが安全かなんて分からないんだから!

ましては夜に出歩くなんて……!」

「ああぁあ! もう! 分かってるって!」



何かむかつくぅう!



「夫婦漫才は辞めろ。お前ら二人とも」

「「誰が夫婦だっ!(ですかっ!)」」

「息合ってるじゃねぇかよ……」



くそっ、言われて否定出来ない……!


でも、偶然だ。うん、そう。


足を引いて走り去る準備をする。



「そうだ、総司」

「はい?」



次に見た土方さんの顔。


悪巧みをしている気がしてならない。


いや、たぶん外れじゃ無い筈。



「お前、こいつと一緒に寝ろ」