妖しの姫と天才剣士




「ちょっと散歩に」



無難な言い訳を言う。



「灯りも無いのにか?」

「ええ。悪目立ちしても意味無いですからね」



嘘は言ってない。


だって、悪目立ちするのは良く無い。


ただ。


その相手が新選組なだけだ。


普通の顔をして、私はこの場を立ち去る。


筈だったのだが、腕が掴まれて去る事が叶わない。



「……何するんですか」

「お前は、ここを去るつもりだろ?」

「……まさか」



一瞬だけ言葉に詰まった。


最悪だ。


それだけで彼には命取りに……!



「フッ、嘘だな。お前は此処を逃げ出すそのつもりだった、だろ?

それに、お前は体調不良だったようだし」



細められた目。


何もかも見透かしたような土方さんの目から私は逃れられない。


視線をそらす事さえ。


許されないと思った。



「…………あれ? 土方さ〜ん?」