妖しの姫と天才剣士




私がどうすれば良いかなんて分からない。


私が新撰組を離れることと離れないこと。


どっちが正しいなんてわかるはずもなかった。


本を投げつけてもこの有耶無耶な気持ちは晴れそうにない。


逃走を図るなら今日。


じゃないと、土方さんに見つかりそうだ。


私が出る為に持ったのは刀。ただそれだけ。


それ以外に必要なものなんてない。


それに刀だけを持って出れば不自然には思われない筈。


見上げた空は雲が覆われていて暗かった。


私の心みたいで少し笑えた。


誰にも見つからずに辿り着いた門。


此処を出れば出れる。






はずだった。



「茅野……? お前、何してんだ」



一番会いたくない人に会ってしまった。


土方さん、貴方はどれだけ私の邪魔を……。


間の悪い時に限って私は土方さんに出会ってしまう。