妖しの姫と天才剣士




「…………総司」

「? どうしたの、茅野ちゃん。珍しいね、こんな所まで来るなんて」



井戸まで行くとそこには総司の姿が。


少しだけ長い髪を下ろしているのは新鮮で。


少しだけカッコいいとか思った。


柄じゃない。



「……顔を洗いに」

「そうなんだ」



バレない様に俯いて答えた。


桶に注がれた水で顔を洗う。


冷んやりとした井戸水はやっぱり気持ちいい。



「総司。今日、訓練休ませてもらっても……良い?」



顔を洗いながら問いかける。



「……別に構わないけど? 茅野ちゃんに教える事ほっとんどないし?」



ちょっと嫌味の混じった口調。


いつも通り。ただそれだけ。


それが何だか少しだけ嬉しかった。



「ありがと」



部屋に戻った私はそのまま床にに寝そべった。


目を閉じても浮かぶのは血走った妖の顔。


寝ててもそれは余計に疲れる事で。



「…………きつ…………」



思わず、そう呟いてしまう程に。


眠る事が苦痛でも体は確かに疲れを訴える。