妖しの姫と天才剣士





「……大丈夫。あれは、私も悪いし」



あの時、気が動転してた私を落ち着かせるには十分だった。


私の体を押さえるには両腕も離せなかっただろうしね。


気にしない、気にしない。


……少しくらい、気にして欲しい気持ちもあるけどね!


そんな事は絶対に言えない。



「いや……ちょっと、あれにはいろいろと……」



ごにょごにょと口を濁らせた総司。


どうしたの?



「もう、いいや……。本当にごめんね?」



何度も謝られると何だかこっちの方が恥ずかしくなってきた。



「この話はもう終わりっ! 早く行こう。もう時間なるしね」



その後は二人とも他愛のない話をした。


二度とその話には触れない。そんな暗黙の了解がある気がした。


話している間に寺までつく。



「僕は物影に隠れてるから。何かあったらすぐ出て行く」

「分かった」


ガランと空いた空き地。


その中心に私は立った。