妖しの姫と天才剣士




「何でもないです。だから返してください」

「何でもねぇって事はねぇだろ。しかも何だ? 最後の文は……!」



新選組を抜ける。その事を言ってるんだろう。



「茅野。お前、隊則は理解してるよな……?」

「してますよ、もちろん」



脱走は許すべからず。でしょ?


それでどれだけ腹を切らされた者が居ることやら。


観察方の山崎さん、島田さんたちは最近駆けずり回っていた。


それに私が背く事はないだろうと思っていた。


抜けても行く当てなんてない訳だし。やってる事そんな変わんないし。


でもまさか私がそうなるかもだなんて。


内容も教えないで土方さんがはいそうですかって出してくれる筈もない。


多分、私はまだ完全に信頼されてる訳じゃないだろうし。


最初から土方さんが屯所に置いてたのは私の監視だ。


これは、もう土方さんに話すしか……ない?