お梅さんの声が聞こえて私は振り返った。


そこには悲しそうに笑んだお梅さんが。


その手には小刀が握られていて。



「私は小雪はんの事、好きやったんよ?……」



芹沢さんの血で塗れた私に弁明の余地なんてない。


小刀の鞘を落としたお梅さんは私に一直線で突進してくる。


咄嗟の事で誰も反応出来ない。


私だって刃先が触れる直前になって動けたくらいで、左腕が軽く切れた。


けれど、お梅さんも背中から斬られていて、動く事は出来ないだろう。



「芹沢はん。私も行きますから……」



最後はその小刀を私へと持たせてそっと心臓へと突き刺した。


ポタリと私の腕に乗る涙と共にお梅さんは息絶えた。



何の感慨もない。なのに。


任務が終わった。ただそれだけのはずなのに。


何時もよりも体の力が抜ける。


この場から逃げる事すら出来ないくらいに。



『小雪はんの事、好きやったんよ?』



その言葉が、私の心を抉り去っていく。