腕に刀を突き刺す。
芹沢さんが悲鳴にならない叫び声をあげる。
吹き出した血を浴びた私はきっと恍惚とした表情を浮かべているのだろう。
だって、私の中の誰かがこう叫んでるんだもの。
『殺セ、浴びロ、その血ヲ!』
ふわりと白い影が横切るのが見えた気がする。
でもそんな事、関係ない。
もっと、ちょーだい? 赤い色を、その温かさを。
血を纏った刀の血先からボタボタと畳に血が落ちた。
身体中を赤く染めた芹沢さん。いや、妖狸。
その刃先を狸の首に向けると一言呟く。
「ラクに死なせてやる」
ズシャッ、と首から音を立てた。
手応えは思っていたよりも随分と軽かった。
つまんない。
すうっと狸の姿から人の姿へと戻った芹沢さん。
その瞬間、私がパチリと目を覚ました。
あれ、何してたの? 私?
手に握られている刀にはべっとりと芹沢さんの血が付いていた。
「何故思い通りに動かぬ……」
驚いた顔の私へと血の混じった声で言った芹沢さんの言葉。
それに、耳を疑ってしまう。
は…………?
「そなたは…………何者じゃ」
ぐさっと、息の根を止められる芹沢さん。
その息を止めたのは総司だった。
