妖しの姫と天才剣士




その爪は私に向けられた。


間一髪で避けたものの、次に逆の腕が振り下ろされる。


畳を抉ったその爪、それが触れればひとたまりもない。


それでもこの部屋は狭くてすぐに隅に追いやられてしまった。


もう、逃げ場がない。



「沙雪!」



総司が剣で捌いてその攻撃は私から逸れた。


それでも一向に私から狙いが逸れない。


皆、確実に攻撃を仕掛けているのに。



「くそっ、お前を連れてきた事は間違えだったか。

狙われるなら俺だと思ってたんだがな」



少しだけ近づいた土方さんが苦々しげであり、意外そうな声音でそう呟いた。


私が、一番恨まれたという事?


そんなに、酷い事…………



「したんだろな」



新見さん、お梅さんとの絆を引きちぎる事になったのは他ならない私のせい。


––––ワタシノセイダカラ。


直後、私の枷はカランと落ちた。


完全に、何かが外れる音。


ガチャガチャと。


それは誰かの笑い声にも似ているようだった。