妖しの姫と天才剣士




「ハハッ。ただ使われただけかと思っておったが……。

まさかこんな所にまで交じっておるとはのぅ」



笑い声を漏らした芹沢さん。


直後、その頭から耳が生える。


「ここで、散るのがワシだろう。

そして、新選組はお主らの天下だ……けれどものぅ……」

「ここで簡単に負ける訳にはいかんのだの!」



体を軋ませた芹沢さんはその姿を巨大な狸へと変えていく。


刀を抜いて構えるものの誰も動けなかった。


部屋いっぱいを埋める芹沢さんの威圧感に動けなかったんだ。


散ることは、死んでしまうことはわかりきっているのに、それでも抗おうとする彼の力に。



「まずは……お前じゃ、土方」



その言葉の直後、芹沢さんは狸の顔に似合わない大きな咆哮をあげた。