準備を手伝い終えた私は部屋に戻ると、上下黒の袴に着替えた。
あのお酒が、きっと芹沢さんの最後の晩餐だ。
ちゃんと、味わってください。
外では雨が降っていて、その音だけがやけに際立って聞こえる。
どれだけ、時間が経っただろうか。
何時ものように屋根裏に入り込むとそこでは二人が寝ていた。
幸せそうに眠るお梅さん。
それを愛おしそうに抱き締めている芹沢さんを見てチクリとなる。
馬鹿馬鹿しい。
私にはもう、相手を思うような感情は抜けたと思っていた。
戻さなければならない。
『前』の私の感覚に。
二人が完全に寝静まっているのを確認して私は降りる。
そのまま私は雨の中待機していた土方さんたちに近づいた。
「土方さん。芹沢さんが寝静まった姿を確認しました」
「よし。突入だ」
そう言ったかと思うと全員走り出した。
これは短期決戦。遅ければ相手に反撃をする機会を与えてしまうから。
いつも通り、してきたようにすればいい。
私は犬だ。命令を忠実にこなす犬。
何だか今日はそう考えていないとやっていけそうもなかった。