「やめて差し上げて下さい。芹沢さん」



私は反射的に芹沢さんと彼の間に割り込んだ。


何してるんだろ。こんなことしたら悪目立ちしちゃう。


それでも、此処だけは譲れないと思った。


これ以上、悪評を広められる訳にはいかないから。



「小雪。そこを退くのじゃ」

「嫌です。

これ以上、この人を傷付けても意味は無いはずですよね、芹沢さん」

「そこを退け」



明らかに怒りを孕みだした芹沢さんの声。



「だったら、私を斬り捨てればよろしいでしょう? 芹沢さん。

土方さんなら気にしませんよ? 私が殺されても」



能無しと馬鹿にされるだけ。


それに、私が居なくなったら別の人で対応してくる人だから。


しばらく私と芹沢さんは睨み合った。


先に折れたのは芹沢さんで、ふっと息を吐くと鉄扇を納める。



「そなたには負けた小雪。では、着物は頼んだぞ」

「…………かしこまりました」



店主の表情にうかんだ恐怖はまだ色濃く残っていた。


でも、それ以上私が出来ることはない。


そのまま、外に出た。