「じゃあ、これでお暇させて貰う」
新見に引っ張られるようにして、芹沢は部屋を出て行った。
「結局のところ、何をしに来たかったのだろうか……」
「敵方の偵察だろう。新見の差し金だ」
「敵方って……トシ。私たちは新選組の仲間だぞ?」
「それでも、両方分かり合えるとは思ってない、だろ?
互いに蹴落とす機会を狙ってるんだ。分かってるはずだ、 近藤さん」
言い返さないって事は近藤さんにも分かっている。
芹沢たち水戸派と俺たち試衛館派。
双方がこの新選組の実権を握ろうと画策していること。
それだけ敵対しているのは明らかだ。
互いにお互いを消す画策を裏で繰り広げているんだからな。
それでも、やっぱ敵だと思えないのが近藤さんだ。
優しすぎる。
だから、俺が…………。
鬼に。誰からでも恐れられるような鬼にならなきゃいけねぇんだ。
近藤さんに任せるのは前に立って皆を率いてもらう事だ。
汚れ仕事は俺が請け負ってやるさ。
「失礼しますよ〜」
次に入って来たのは総司だった。
