妖しの姫と天才剣士




「沙雪」



珍しく私のことをさゆと呼ばずに沙雪と呼んだ。


髪を下ろした総司。肩に流された髪はまだ水気を帯びているようだった。



「総司」



私は近づくとその胸の中に飛び込んだ。



「うわっ」



首に巻きつくとぎゅぅっと抱きしめる。


頭を撫でられるとトロンと瞼が落ちそうになる。疲れていた……のかな?


片手を頰に当てられ、自然と顔を上に上げる。


チュッ。と音がして唇が触れた。



「っ!」

「顔真っ赤。まさか、約束覚えてないわけじゃないでしょ」



耳元で囁かれるとさらに顔が熱くなる。




「そ、そりゃあ、忘れてるわけじゃ、ないけど……」



恥ずかしい。



瞼をきつく閉ざしているといつの間にか布団の上に寝かされていた。