「おい総司、テメェ沙雪に何したんだ?」


僕の肩に頭を乗せて眠ってしまったさゆを見て平助は切れる。



「何って……。お酒を飲ませただけだよ?」



ちょっと、強い奴をね。


でも、僕これくらいじゃないとほんのりとも酔えない。


さゆはお酒に慣れてないだろうから飲ませればすぐ酔うとは思ってたけど。



「まっさか、こんなに早く酔うとはねぇ〜」



意外すぎてくすっと笑い声が溢れた。



「……酔わせたんかい」



呆れ顔の平助。目を細めた僕は酒を飲み干した。



「……いや、でもおかしいな」

「何が?」

「茅野の奴、酒には強いみたいだがなぁ〜」



頰を掻いた左之さんの言葉に首を傾げる。


なんで左之さんそんなこと知ってんだろ。



「いや、屯所の中であいつ酒の飲み比べしてたんだよ……。

ここに来たばっかの頃にな、他の隊士連中にふっかけられて。

そしたらさ、他の隊士は全員酔いつぶれてやがるのに茅野一人飄々としてたんだって。

ありゃあ、驚いたぜ」

「ふ〜ん」



来たばっか……か。その頃僕はさゆのことどう思ってたんだっけ?


覚えてないや。


そんなことをしていたことは初耳。


けど、そうならなぜこうなっている?



「おかしいなぁ……」

「ん……」


ことんと落ちかけたさゆの体を抱き起こすと薄く目を開く。



「そ……う、じ……?」

「はよ」



自分が酔わせたことなどさっぱり隠して笑顔を向ける。


すると今までに見せたことのないくらい無邪気な笑顔を向けて。


「総司ぃ〜っ!」



と、抱きついてきたのだ。