妖しの姫と天才剣士




急いで着物と袴と取り出し、着替え、髪を結い上げる。


いつもよりさらに雑だからきっとぐちゃぐちゃだろうがそんなこと気にしてられない。


そのあと、出しっぱなしの布団を片付けて、ようやく三人を中に入れた。



「どうやら、本当に大丈夫そうだな」

「ええ。……まぁ、なんとか」



目の前に座った左之さんに苦笑いを返しながらため息をつく。



「で、まだ平助はあの衝撃から立ち直れてないわけ?」



総司は私から顔を背けた藤堂くんに冷たく言い放つ。



「平助もまだ餓鬼だからなぁ〜」

「……うるさい」

「身長とか特にねぇ〜」

「るっせぇよ! てか総司! 今はその話関係なくねぇか!?」

「まぁ、関係ないけど。……ねぇ、さゆ」

「ん、何」

「なんで今って感じだろうけどさ、平助の頭見てもなんとも思わないの?」

「ああ」



確かに今の藤堂くんの髪型は前とは違っていた。


ツルツルだ、頭が。前までのくるんとした髪はどこへやら。


まぁ、残念な髪型ではある。お坊さんには失礼であるが。


そして、その頭にはぐるぐるに包帯が巻かれているから余計に痛々しい。


……でも、だから? って感じだ。


そりゃあ、間近に見れ……ば…………っ。



「おい、沙雪。今あからさまに視線逸らしたよね。

ちょ、こっち向け」



ぐいっと顎を捕まえられ、藤堂くんの顔が視界を埋める。


それと、私が噴き出すのは同時だった。


「は、ははっ! ちょ、その顔で迫ってこらっ、れたら……っ!

ふふっ、あははっ!」



お腹を抱えて笑っていると段々脇腹が痛くなってきた。



「ふ、ふ……。ああ、死ぬかと思ったぁ」

「俺の方がよっぽど恥ずかしいし」

「平助は元から恥ずかしい奴だもんね〜。初めて京都に来た時なんて……」

「だぁああっ! その話はすんじゃねぇっ!」



そうやって、取っ組み合いをしだした。



「お、おい……」


服を引っ張り始めた二人を止めようと手を出すが、左之さんに止められた。



「いいんだよ、二人はあれで」



そう言って笑った左之さん。