妖しの姫と天才剣士




そんなことを臆病な私が言えるはずもなく。


しがみついて動けなくなった。



「……さゆ……暑い」

「私も暑い」

「じゃあ離れ……」



本気で部屋の隅まで行こうとした私の着物の袖を慌てて総司は掴んだ。



「何?」



わざとらしく不機嫌さを出すと総司はバツの悪そうな顔をする。



「…………ごめん」

「何が?」

「いや……だから、離れてって言った……こと……とか……」


珍しくおどおどしてる総司をいじめたくなって返事も聞かずに歩き出そうとすると。


ポフッ


総司の腕の中に捕らわれていた。



「離れなくていいの?」

「うん」



じゃあ、と遠慮なくくっつくことにした。


確かに暑い。じわっと汗も滲んでくるけどそんなこと気になんかしない。


二人でこうしている時間がずっと続いて欲しい。


いつまでも、いつまでも----


すぱぁああああんっ!