そう思って、窓枠に足をかけた時。


----こいつが、いた。


確か沖田総司とかいったか。こいつは沙雪の想いの人だったはずだ。


たかが人間の分際で俺らの前に立ちはだかった馬鹿なヤツ。


だがそのせいで最初の計画は失敗した。由羅という分身を失った原因でもある。


あとは逃げる事しか許されないのであればいっそ、


この場で殺してしまおうか。



ついさっきこいつと交わした言葉を思い出した。



***



『----なんだ、また君? この場にさゆは居ないよ?』

『君だけには絶対渡さない』



あの頭を掠める憎たらしい笑顔が恨めしい。


姫様と同じように俺を寸前のところまで追い詰めた下賤な人間。


間一髪といったところで呪符が間に合ったが、一時はどうなることかと思わされた。


こいつには色々と恨みがある。


もし、こいつを殺せば。



「姫様は俺の手を取ってくれるだろうか」



その言葉を口にした途端、今までにない高揚感に口元が緩む。


こいつを殺せば、沙雪は完全に壊れてくれるだろうか。


ただの妖の依代になった沙雪。


最後にこいつだけは、



「----殺してしまおう」