妖しの姫と天才剣士




「済まないが、二階の方を頼んでもいいか!

そっちには総司一人だけなんだ!」



一人を斬り伏せながら叫んだ近藤さん。


その言葉に思考が一瞬だけ止まってしまう。


何……。総司が独り二階に?



「……なっ!」



状況が整理出来ると声をあげずにはいられない。


一人で二階を担当してるの⁉︎


嫌な汗が背中を走る。


馬鹿な----。いくら総司でも無謀すぎる!


その時に斬りかかってきた志士を貫くと刀と一緒にその体を振り下ろした。


ずるりとすべり降りる体。


刀を付いた血を払うと辺りを見回した。


ここには永倉さん、藤堂くん、近藤さんたちがいる。


……任せても大丈夫!


そう自分の気持ちを抑えながら狭い階段を駆け上がる。



「っ!」



階段を駆け上がると下よりも惨状が広がっていた。


至る所に刀傷に血飛沫のあと。


じめっとした暑さと共に鉄臭い匂いがこの場には立ち込めていた。


嫌な臭いに顔を顰めつつ総司の姿を探した。



「総司、どこ⁉︎」



声をかけても返答が返ってこない。しかも剣戟の音も聞こえないなんておかしすぎる。


そのことが更に私の心を焦らせた。


その焦りを脱ぎ去るかのように一番手前の部屋から障子を開けて走る。


それでも総司の姿はちっとも見つからない。


あるのはたくさんの骸だけ。


次々に障子を開けていき、一番奥の部屋にまで行くと……!



「そう……じ!」