妖しの姫と天才剣士




確かここら辺が池田屋だったはず。


でもおかしい。


近藤さんたちの姿がない。



「は、はあっ……」



ゆっくりとその場所に近づいていく。


すると段々池田屋の近くから聞こえてくる叫び声に金属音。


ああ。



「待って、くれなかった…………!」



くそっと間に合わせることの出来なかった私自身に毒づきながら池田屋の中へと入っていく。

急いで中に入っていくとそこでは永倉さんたちが斬り合っている。


私が入ってきたことにも気がつかないくらい集中している皆さん。


そしてふと目に入った近藤さんの背後。


そこにはギラリと輝いた刀を構えた志士の姿。


そのことに近藤さんは気がついていないッ!


私は近藤さんの背後に迫っていた志士を斬り捨てた。



「近藤さん!」

「茅野くん! なぜここに⁉︎」

「土方さんの隊が来るまで待ってくれとの伝令があったのですがっ!」



押し込まれないように刀に力を込める。


弾いた刀を捌き----。



「残念ながら、間に合いませんでしたっ!」



柄付近まで沈み込んだ刀の奥では生気を失っている志士の体を唯一支えていた。



あ〜あ、絶対に土方さんに怒られる!


そう言うとこの場には似合わない笑い声を近藤さんはあげた。



「それは済まなかったな!」

「いえ」



全然悪びれてる様子はないんだけどね。


近藤さんらしいな!


おおらかで、人がよくて、強い。


まぁ、駄目だとは思わない。


どうやら言っていた会津藩の応援も得られてない様子だし。


病欠も多いし。


こんな私の手でも役に立つのであれば存分に振るってやる!


そう意気込んだ時。



「茅野くん!」

「はい⁉︎」