妖しの姫と天才剣士




唇に血が滲むのが分かる。でもこんな痛みどうってことない。


総司の方がもっと、もっと痛くて辛い筈だから。


俯いた私の顔を持ち上げた総司。



「さゆ」



総司はコツンと額をくっ付けて私の頬を両手で優しく包み込む。


その手の温かさに思わずひくついた。



「さゆは気にしちゃ駄目だ。どうせどうする事も出来ないんだし。

……ただ。少しだけ後悔はしてる」



最後の一言でまた目を伏せる。


だって総司は近藤さんの為に頑張ってきてた。


それが夢半ばで閉ざされる事になってしまうんだから。


私の…………せいで。


でも、総司の口から出されたのは思いがけない言葉だった。



「さゆと、幸せな時間を過ごしすぎちゃったなぁ〜って。

初めて思っちゃったんだよね、死ぬのが怖いって。

さゆと離れるのが嫌だって」



私の居た時間は、幸せだったの?


貴方に辛い思いしか与えることの出来ない私と居ることが幸せだったと?


その答えを総司は言ってくれない。



「あの桜見の時にね、思ったんだよ。来年の春はこの場所に居られない。

さゆの事を独りにしちゃうんだ〜ってさ」



頭を撫でられる。